プロデューサー/植田博樹
1967年兵庫県出身。90年TBS入社。TBSテレビ制作センタードラマ制作部所属。プロデュースデビュー作は「私の運命」(貴島誠一郎との共同プロデュース)。以後数々のヒット作を世に送り出している。主なドラマのプロデュース作として、「ケイゾク」、「ケイゾク特別篇・ファントム〜死を契約する呪いの樹〜」、「ビューティフルライフ」、「ハンドク!!!」、「愛なんていらねえよ、夏」、「GOOD LUCK!!」、「オレンジデイズ」、「輪舞曲」、「タイヨウのうた」、「孤独の賭け〜愛しき人よ〜」等。映画のプロデュース作品としても、堤幸彦監督『ケイゾク/映画Beautiful Dreamer』(00)・『恋愛寫眞』(03)、『包帯クラブ』(07)がある。
 
 
 
製作にあたり堤監督と意見の相違などはあったのでしょうか
あんまり、ないんですよ。僕と堤さんだけが面白がっていて、他のみんながドン引き、というのはしばしばなんですが…。
だけど…・そうだなあ。僕と監督の意見が一番違ったのはラストの熊本さん。それと、子役の二人ですかね。僕は、大人の熊本さんはカッコいいハーフの人がいいんじゃないかと言ったんですよ。原作の大人の熊本さんはカッコよくなっているので。でも監督が、だったらアジャ・コングさんみたいな人がいいという意見で…。全然違うよって。僕はUAさんとかね、そういうイメージだったんだけど。
でも、まあ、アジャさんだったらやさしい感じになるかも、って、そこは僕も考え直したんだけど、さすがにあの衣装で、鳥までいて、とは思わなかったわけですよ。これじゃ、泣けないよって。んで、「監督、これ、鳥は要りますかねえ」とかチクチク文句言ったら「あれねえ、模型みたいになっちゃってるんでCGで動かしますから」って言われて。そういうレベルの話じゃないんだけど…って、それぐらい食い違いがありました。でも結局、芝居を観たら、この表現こそがこの作品には、合っているんだなと、そう思えたんです。
凄いよねえ。常識を超えて、泣けるんだよねえ。
子役の二人に関しては、「プロデューサーとして言います。キャストを変えませんか」ってぐらい強硬に提案したんですけど、監督は頑として譲らないんです。でもこれについても、最終的に出来上がったのを観たら結構ものすごい良くて、悔しいけど「あの子役で正解でしたね」と言ったら、「だから言ったじゃねえか!(笑)」と勝ちほこったように言われた。僕があんなにぐちゃぐちゃ言うのは、あんまりないので、監督的にも押し切るのはストレスがあったと思うんですけれど。完敗でしたね。監督の才能に、「ほんとに参りました」と思いました。
中谷美紀さんが幸江役で好演されてますね
原作を最初に読んだ時は、なぜか、大原麗子さんとかのイメージなのかなあって、思ってました。やっぱり、幸が薄い感じで色気がある女優さんがいいじゃないですか。で、今なら誰がいいんだろうなと考えたんですね。イサオは幸江のことが大好きなので、ホクロがあってちょっと残念な感じになっているけどイサオからみたら凄い美人なんだろうなと。そこで、薄幸な美人のイメージのある中谷さんがいいと。中谷さんが薄幸な美人というのは、僕だけのイメージかもしれませんが…。あの超絶美人顔がイサオからみたイメージという設定。そこに何か…変なホクロとかつけて崩したら、善い加減の幸江かなあと考え、中谷さんの事務所に原作本を持っていったら「おもしろいですね」と言っていただき、快く引き受けていただきました。ちなみにオファーしたのは「嫌われ松子」より僕のほうが先です!!!…と言っても、まあ、負け惜しみになりますが…。 あのキャラクターなんですが、中谷さん本人が、監督と相談して、大・中・少とあるホクロの中で一番、顔のバランスが崩れるサイズのものを選んだんですよ。リアリティーのある中で、ということですが。で、細かいそばかすをつけて、髪も半端に色が染まっていて根元が黒くなっちゃっているという、ディテールを中谷さん自ら、丁寧に組み立てていかれました。 幸江としては、衣装もメイクも、貧乏なりにちゃんとしている。イサオにかわいいと思われたい乙女心をもっている、というのを、実は細かく生かしているんです。だから、ただの崩しだけじゃなくて、ちゃんと、かわいい幸江という造形になっています。よね…
他にも一癖あるキャラクターがいい味出してます

1人1人のキャラクターが本当に大事だと思ったので、それぞれの人生の背景を設定してキャスティングに臨みました。幸江の隣の部屋にいるおばちゃん役をカルーセル麻紀さんにしたのは、中沢プロデューサーのアイデアです。普通のおばちゃんの女優さんはいっぱいいるんですけど、なんとなく1つ大きな過去があって、みんなそれを分かっているんだけどそこに触れない優しさみたいなのを出したらどうかと。中沢プロデューサーのキャスティング案というか、イメージの豊かさは、本当に凄いんですよ。監督とイメージキャスト合戦をして、対等に渡り合えるのは、中沢さんだけでしょうねえ。
西田敏行さんは、みんなが一致して家康にぴったりだということで、ずいぶん前からお願いに行きました。「これ泣けるんですよ」とマネージャーさんに原作本渡したら「原作が良いから出るよ」ということで受けていただけたので、ここでも原作に助けられました(笑)。
遠藤憲一さんは、かっこいいのにモテないマスターにしたかったんで、お願いしたんです。ダサい男じゃなくて。やっぱり、あの町で店出してやっていけるわけだから、ヌルい男じゃダメだと。多分、なんかの過去があって、あの町に流れてきたわけです。ストーリーには関係ないんだけど、そういう意味がこめられています。
気仙沼でロケしてるのに気仙沼ちゃん出さないのはナイなとか、イージーなものもあります(笑)。
名取さんは「堤監督作品だったらワンシーンでもいいから出たい」って言ってくださってたんで、それはありがたいと。本来は、そんなわけにはいかない大物ですから。それで、厚かましくも美和子の役を無理やりお願いしました。名取さん自身の主演ドラマの撮影中のお忙しい時に、わざわざ気仙沼まで来ていただいて…。でも、西田さん演じる幸江の父親、家康のお腹を、名取さん演じる美和子が甘い猫なで声出しながら足でグリグリやってるシーンは、大迫力でした。「いやー。これやられたら、捨てるよな、娘」って、監督と西田さんが盛り上がって、男性スタッフは大きく頷くと言う(笑)。ありがたかったです。